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日本弁護士連合会が声明と意見書を出しました

「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に関する会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130911.html

本年8月30日、復興庁は、原発事故子ども・被災者支援法(支援法)について、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(「基本方針案」)を公表した。支援法の施行から今日まで約1年2か月の間、福島第一原発事故の被害者は基本方針の策定を待ち続けてきた。まずは、この「基本方針案」の策定・公表までに時間を要しすぎているということを指摘せざるを得ない。

支援法は、住民・避難者からの意見反映のための措置をとることを明記しており、支援対象としている当事者から意見を聞くことは必要不可欠な手続である。しかし、復興庁は、事前に公聴会の開催等の措置を講ずることなく「基本方針案」を公表し、わずか2週間という極めて短期間の意見募集(パブリックコメント)を行っている。また、復興庁は、「基本方針案」についての説明会を9月11日に福島市で、9月13日に東京都江東区で開催することを、それぞれの開催日のわずか1週間前に告知し、そこで参加者からの意見を聞くとしている。周知のための期間を考えれば、パブリックコメントの期間を1か月間に延長すべきであり、また、説明会についても、多くの被災者が生活している福島県内での開催が1回限りというのは余りに限定的であり、さらに全国各地に避難者がいる状況を考えれば、それ以外の各地でも開催して、より多くの被災者からの直接の意見聴取を行うべきである。

次に、支援対象地域について、「基本方針案」は、事故後「相当な」線量が広がっていた福島県中通り・浜通り(避難指示区域を除く)のみを対象としている。事故による放射能汚染は、福島県に限られず、より広範な範囲に広がっていることからも、この支援対象地域の範囲は狭すぎるものであり、国会答弁においても、福島県外も支援対象地域となるとされていたことに鑑みると、このような対象地域の設定は立法者の意思に反するものといわざるを得ない。また、「基本方針案」においては、支援対象地域のみを「支援対象」とする施策は一つもなく、支援対象地域を定めた意味はほとんど存在しない。また、「準支援対象地域」も、既存の施策ごとに個別的に設定されているその施策の対象地域を、そのように名付けたものにすぎない。当連合会が、一貫して求めてきたように、2011年3月11日以降の1年間の追加被ばく線量が国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の一般公衆の被ばく限度量である年間1ミリシーベルトを超えることが推定される全地域及び福島県の全域を「支援対象地域」とし、「支援対象地域」の住民には、避難の権利を実質的に保障するための必要な支援施策を実施することを強く求める。
続いて、「基本方針案」の施策に、福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応、福島県外も対象とした自然体験の拡充が盛り込まれたことについては、これらの施策を適切な民間団体が担うことで、避難者の個別ニーズに対してきめ細かい対応が進む可能性もあり、この点は前向きに評価できる。

しかし、「基本方針案」の被災者生活支援等施策は、そのほとんどが既存施策の寄せ集めにすぎず、また居住者や帰還者に対する促進施策に偏っているが、一方で、居住者や帰還者に対しても損害賠償だけではまかなえないような被害に対する具体的支援策に乏しい。さらに、避難者に対する具体的な施策に乏しく、避難者から要望が強い新規避難者向けの住宅支援は含まれておらず、避難のための移動の支援に関する新たな施策も含まれていない。当事者が居住継続、避難及び帰還のいずれを選択したとしても等しく支援するという支援法の理念に沿ったものであるとは評価することができない。

また、福島県外における健康診断の実施や被災者への医療費の減免措置については、さらに今後の検討に委ねられることとされた。福島県の県民健康管理調査や調査結果に基づく二次検査などについて、県外避難者は、福島県で検査を受ける場合は交通費が支給されず、避難先で検査を受ける場合には医療費の一部負担を強いられている。支援法の施行後1年2か月以上経てようやく公表された「基本方針案」において、被災者にとって最も切実で重要な健康・医療関係の施策が先送りとされたことは誠に遺憾である。早期に、被災者に負担をかけない施策の策定を求めるものである。

支援法の確実な実施のためには、政府内に外部委員を交えた常設の諮問機関を設け、公開の場で支援法の実施のために継続的に協議していくことのできる体制を確立することが必要である。当連合会は、市民団体とも連携し、「原発事故子ども・被災者支援法ネットワーク」を組織し、支援法の確実な実施を求めて活動してきた。今後も、多くの被災当事者や支援グループと連携し、支援法の理念に沿った真の基本方針の制定とこれに基づく施策の実施を強く求め、政府に対して積極的に働きかけていく所存である。

2013年(平成25年)9月11日
 日本弁護士連合会
 会長 山岸 憲司


「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見書
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130911_2.html

日弁連は、復興庁の実施した「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見募集に対し、2013年9月11日付けで「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見書を取りまとめ、復興大臣に提出しました。

意見書の趣旨

1 支援対象地域について、以下のとおりとすべきである。
(1) 支援対象地域は、「相当な」線量が広がっていた福島県中通り・浜通りだけを対象とするのではなく、2011年3月11日以降の1年間の追加被ばく線量が国際放射線防護委員会(ICRP)勧告の一般公衆の被ばく限度量である年間1ミリシーベルトを超えることが推定される全地域及び福島県の全域とすること。
(2) 準支援対象地域も、上記の支援対象地域指定に伴って、より広い範囲に拡大すること。

2 福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応や福島県外も対象とした自然体験の拡充については、前向きに評価できる施策であり、適切な実施主体を選定し、広く実施されるよう求める。

3 「基本方針案」の定める施策は、居住者や帰還者への対策に偏り、避難者への具体的な施策に乏しいといわざるを得ない。したがって、避難者から要望が強い新規避難者向けの住宅支援や避難のための移動の支援に関する新たな施策を求める。

4 福島県外における健康診断の実施や被災者への医療費の減免措置について、 施策が先送りされたことは遺憾であり、速やかに、被災者に負担をかけない施策の策定を求めるものである。

5 避難指示区域から避難している被災者が、避難先で定住する場合や帰還する場合の住宅の確保等について、損害賠償だけではまかなえない費用が発生する場合は、その費用を国が支援することを求める。

6 支援法の確実な実施のためには、政府内に外部委員を交えた常設の諮問機関を設け、公開の場で支援法の実施のために継続的に協議していくことのできる体制を確立することが必要である。
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支援法具体化訴訟弁護団・SAFLANが声明を出しました

「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する声明

支援法具体化訴訟弁護団
福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)

1 はじめに

本日、復興庁は、原発事故子ども・被災者支援法(支援法)について、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(基本方針案)を公表しました。

支援法の施行から1年2ヶ月以上の間、福島第一原発事故に起因する被曝と被災者の生活上の苦しみ・負担は放置されてきました。基本方針案の公表は、遅きに失したと言わざるを得ません。

2 策定プロセスについて

復興庁が、支援法が求めている影響住民・避難者からの意見反映のための措置を経ることなく基本方針案を公表したことは、法の定めに反するものであり、極めて遺憾です。

さらに、復興庁は、今後の意見反映のための措置として、2週間という極めて短期間のパブリックコメントのみを予定しています。これは、支援法が求める意見反映のための措置を満たすものとは言えません。復興庁は、パブリックコメントの期間を延長すると同時に、各地で公聴会を行い、被災者からの意見聴取を行うべきです。

3 支援対象地域について

基本方針案は、事故後「相当な」線量が広がっていた福島県中通り・浜通り(避難指示区域を除く)のみを支援対象地域としています。事故による放射能汚染は、福島県に限られず、より広範な範囲に広がっており、上記の支援対象地域は狭きに失します。また、この地域設定は、福島県外も支援対象地域となる旨の国会での答弁=立法者意思にも反するものです。

そもそも、基本方針案においては、支援対象地域を「支援対象」とする施策は一つもなく、支援対象地域を定めた意味はほとんど存在しません。また、「準支援対象地域」も、施策毎にバラバラに設定されている対象地域を呼び換えただけに過ぎません。

4 支援施策について

今回公表された基本方針案には、福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応が盛り込まれるなど、若干の前進と捉えられる施策が含まれていないわけではありません。

しかし、基本方針案の被災者生活支援等施策は、そのほとんどが既存施策の寄せ集めに過ぎません。要望が強い新規避難者向けの住宅支援は含まれておらず、避難のための移動の支援も無視され、居住継続と避難のいずれの選択も支援するとの支援法の理念を実現するものとは言えません。

また、福島県外における健康診断の実施や被災者への医療費の減免措置については、さらに今後の検討に委ねられることとされています。支援法の施行後1年2ヶ月以上経てようやく公表された基本方針案の内容が、単なる施策実施の先送りに過ぎないことには、失望を禁じ得ません。今回の基本方針案は、被災者の被曝による健康上の懸念に対応したものとは到底言えません。

5 今後の対応

福島の子どもたちを守る法律家ネットワークおよび支援法具体化訴訟弁護団では、今後も、多くの被災当事者や支援者と連携しながら、支援法の趣旨と理念に即した基本方針の制定を求めて働きかけを行っていきます。

また、基本方針案は、支援法具体化訴訟で原告らが求めていたものとはかけ離れたものとなっています。基本方針が閣議決定された際の訴訟上の対応については、今後原告と弁護団との間で協議する予定です。

以上

(別紙)基本方針案に対する詳細コメント(暫定)

(下記は、8月30日時点における暫定的コメントであり、福島の子どもたちを守る法律家ネットワークでは、今後さらに分析を行いパブリックコメントを提出する予定である。)

○「Ⅰ 被災者生活支援等施策の推進に関する基本的方向」について

基本的方向は、支援法2条の基本理念や同法3条の国の責務に言及しておらず、その結果、基本方針案全体として、2条の基本理念からかけ離れたものとなっている。

新規施策として2つの施策しか挙げられておらず、政府自らが既存施策の寄せ集めに過ぎないことを認めている。

○「Ⅱ 支援対象地域に関する事項」について

第1段落、第2段落において、居住者に対する支援の必要のみが強調されており、避難者も等しく支援するとの支援法の基本理念(2条2項)が無視されている。

支援対象地域は、地放射線量が「一定の基準以上である地域」と定義されているにもかかわらず、「一定の基準」を明らかにしておらず、法の定めに反している。

事故による放射能汚染は、福島県に限られず、より広範な範囲に広がっており、上記の支援対象地域は狭きに失する。

また、福島県は全て支援対象地域となる、福島県外も支援対象地域となる旨の国会での答弁=立法者意思にも反する。

支援対象地域より広範囲な地域を準じる地域として定めるとしているが、実際には、既存の施策毎にバラバラに設定されている対象地域を、準支援対象地域と呼び換えただけに過ぎない。

○「Ⅲ 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項」について

記載されている施策のほとんどが既存施策であり、支援法に基づく新たな施策は極めて限られている(現在詳細を分析中)。

居住者(8条)、避難者(9条)、帰還者(10条)のそれぞれにつき掲げられるべき各施策を一括で記載することにより、避難者向け施策が乏しいことを隠蔽している。

国立青少年教育施設におけるリフレッシュ・キャンプが福島県外でも行われることは評価しうる(要確認)。

避難者への移動の支援(9条)としては、母子避難者向け高速道路の無料化措置のみであり、そもそも避難を実施するために必要な移動の支援策が欠けている。

避難者の住宅の確保(9条)としては、民間賃貸住宅の借り上げの延長と公営住宅への入居円滑化という既存施策しかなく、両施策とも新規適用は2012年12月で打ち切られており(後者については確認中)、今後避難を開始する被災者の住宅の確保は全く手当てされていない。

福島県外での健康管理支援(13条2項)のあり方については、有識者会議を開催するとして先送りにされている。

医療費の減免措置(13条3項)については、何も言及されていない。「医療に関する施策の在り方」についても、結論が先送りにされている。

福島県外への避難者に対する民間団体を活用した情報提供や相談対応については、適切な民間団体が請け負うことで、被災者の個別ニーズに対する対応が進むものと評価できる。

各施策の「具体的な内容に被災者の意見を反映し、当該内容を定める過程を被災者にとって透明性の高いものとするために必要な措置」(14条)について何ら言及されていない。

復興庁の基本方針案に関する報道

 東京電力福島第1原発事故に対応する「子ども・被災者生活支援法」で、復興庁が支援対象地域を線引きする放射線量基準を決めないまま、福島県内33市町村を対象地域に指定する基本方針案をまとめました。

 基本方針案によると、対象地域は「原発事故発生後に相当な線量が広がっていた」とする同県東半分の自治体のうち、避難指示区域やその周辺を除く33市町村。具体的な支援策は、復興庁が3月発表した「支援パッケージ」の拡充を検討するとした。さらに、同県の西半分の会津地域や近隣県を「準支援対象地域」と位置づけ、個人線量計による外部被ばく線量調査などの支援を実施する。

 だが、法令は一般人の年間被ばく線量限度を1ミリシーベルトと定めている。原発事故後に広く指標とされてきた空間線量でこの1ミリシーベルトを基準としたなら、支援対象範囲は福島県以外にも及ぶ。近隣県にも局所的に線量の高い地域があり、福島県内の一部に範囲を限定することに対して反発は必至だ。

 また、災害救助法に基づく県外への避難者向けの民間住宅家賃補助は、昨年末に新規受け付けが打ち切られた。支援法による復活を求める声もあるが、基本方針案には含まれない。

 一方、原子力規制委員会は28日、復興庁の要請を受けて専門家チームを設け、関係省庁を通じて支援対象地域の個人線量データ収集を始めた。住民一人一人の個人線量は空間線量より低く出る傾向がある。国はこの点に着目し、低いデータを基に住民に帰還を促すとともに、線量に基づかない対象地域指定を科学的に補う狙いがあるとみられる。

 支援法は昨年6月、議員立法で成立。原発事故に伴う年間累積線量が一定の値以上で、国の避難指示区域解除基準(20ミリシーベルト)を下回る地域を支援対象とする。だが一般人の被ばく限度との整合性をどう取るか難しく、線引きによっては避難者が増える可能性もあり、復興庁は基本方針策定を先送りしてきた。福島県などの住民は早期策定を求めて東京地裁に今月提訴した。

被災者支援法案指定地域


毎日新聞
2013.8.30より

復興庁が基本方針案を発表,パブコメ募集

復興庁が、被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)に対するパブリックコメントを募集しています。

被災者支援法の問題につきましては、毎日新聞の記事をご参照ください。

締め切りは9月13日までとなっています。

パブリックコメントの募集
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岡山原発被災者支援弁護団

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