1年間の活動報告
弁護団が活動を開始して1年が経ちました。
この1年の活動をまとめておきます。
1 弁護団のあらまし
2012年11月、内外の要望を受け、弁護団を結成しました。
この弁護団は、福島原発事故の影響で岡山に避難された方を支援するために組織された、有志の弁護士チームです。
岡山の弁護士のうち、当初名乗りを上げたのが21人でした。
現在は27人体制となっています。
ちなみに、公的な団体である「弁護士会」とは別の組織です。
ただ、岡山では「弁護士会」会長が「弁護団」団員となり、緊密な連携のもとに活動しています。
避難されている方々にとっては、窓口が2つあるだけで中身は同じと考えていただいても構いません。
2 無料法律相談
弁護団では、岡山に避難された方を対象に、さまざまな法律相談に無料で応じています。
ここ1年余りの間に、115件の相談がありました。
そのうち約7割が原発賠償に関する相談です。
その他にも、夫婦関係や、借金問題など、様々な相談があります。
また、弁護団では、どこから避難された方であっても、区別なく相談に応じています。
相談された方の約6割は福島県からの避難者ですが、その他の東北地方や関東地方からの避難者も、多数相談されています。
さらに、支援活動に関連する問題については、避難者でなくても無料でご相談に応じますので、積極的にご利用ください。
3 原子力紛争解決センターの和解仲介手続(ADR)
弁護団では、東京電力に対する賠償請求を支援する活動を行っています。
賠償請求の方法のひとつが、原子力紛争解決センターの和解仲介手続(ADR)です。
この手続では、書類を作成するだけでなく、センターの担当者と電話で話したり、東京電力側の言い分に対して反論したりすることが必要です。
書類の書き方が分からない、資料の整理の仕方が分からないという方には、弁護士が無料でアドバイスします。
また、電話のやりとりや反論がわずらわしいという方には、わずかな金額で、弁護士に任せることができます。
現在、5世帯の方々が、弁護団を通じてADRの申立をしています。
他にも、13世帯の方々から、弁護士に手続を任せたいとの声をいただいております。
現状は十分に対応できていないところもありますが、今後さらに人員体制を拡充し、鋭意、ADRに取り組む方針です。
4 集団訴訟の準備
弁護団では、集団訴訟の準備を行っています。
集団訴訟は、単なる賠償請求ではなく、原発事故による被害の実態を歴史に刻み、政府の責任を明らかにし、適切な被害回復を実現するという大きな目的で行うものです。
現在は、全国の動向を調査・整理しながら、訴訟に関心のある方々との間で、個別に意見交換を行っています。
5 相談会などの開催
避難されている方々は、それぞれ様々な事情を抱えていらっしゃいます。
色々と悩むことがあっても、余裕がなく、弁護士に相談できないでいることが、少なくありません。
そこで、弁護団では、交流会に足を運んだり、相談会や勉強会を開催したりして、なるべく多くの方々とお話しするようにしています。
ここ1年余りの主な活動は、次の通りです。
2012年 11/11 避難者交流会(弁護士4名を派遣)
2013年 3/10 有機生活マーケットいち 相談ブース(弁護士10名を派遣)
5/19 原発賠償説明会&なんでも相談会(弁護士15名を派遣)
6/30 避難者交流会(弁護士3名を派遣)
7/7 よりはぐプロジェクト原発賠償勉強会&個別相談会(弁護士5名を派遣)
9/1 原発賠償ミニ勉強会@高梁(弁護士3名を派遣)
9/9 原発賠償ミニ勉強会@西大寺(弁護士4名を派遣)
9/30 原発賠償ミニ勉強会@玉野(弁護士3名を派遣)
10/19 原発賠償説明会&なんでも相談会(弁護士16名を派遣)
10/27 原発賠償ミニ勉強会@高梁 Part2(弁護士4名を派遣)
11/16 避難者交流会(弁護士3名を派遣)
12/1 避難者交流会(弁護士2名を派遣)
12/1 個別相談会&座談会@高梁(弁護士4名を派遣)
6 関連団体との連携
避難されている方々に対して、適切な支援を行うには、弁護士だけでなく、さまざまな立場の方々の協力が必要です。
また、他の地域の弁護団と情報交換を行うことで、間違った方向に進まないよう気を配り、適切な支援のあり方を模索することが必要です。
そこで、弁護団では、避難者支援団体や他の弁護団と、積極的な連携を図っています。
ここ1年余りの主な活動は、次の通りです。
2012年 10/1 広島弁護団と情報交換
10/3 関西弁護団と情報交換(大阪へ弁護士1名を派遣)
12/11 広域避難者支援ミーティング(広島へ弁護士1名を派遣)
2013年 1/20 支援法フォーラムおかやま(弁護士2名を派遣)
4/7 全国弁護団連絡会(東京へ弁護士1名を派遣、ただし中止)
4/18 日弁連全国情報交換会(東京へ弁護士1名を派遣)
5/6 全国弁護団連絡会(東京へ弁護士1名を派遣)
5/17 SAFLAN丹治泰弘さんとの懇談会
5/25 福島弁護団(浜通り弁護団)事務局次長 市野綾子弁護士の講演会を開催
6/8 原発関連の日弁連シンポ(東京へ弁護士1名を派遣)
6/9 全国弁護団連絡会(東京へ弁護士1名を派遣)
6/18 日弁連全国情報交換会(東京へ弁護士1名を派遣)
7/27 原発関連の広島弁護士会シンポ(広島へ弁護士3名を派遣)
8/23 日弁連全国情報交換会(東京へ弁護士1名を派遣)
8/23 法テラスと意見交換(東京へ弁護士1名を派遣)
8/24 全国弁護団連絡会&共同勉強会(名古屋へ弁護士2名を派遣)
8/30 時効問題に関する共同意見書を発表
8/31 原発関連の大阪弁護士会シンポ(大阪へ弁護士2名を派遣)
9/6-7 原発関連の日弁連シンポ&被災地視察(福島へ弁護士2名を派遣)
9/13 原子力紛争解決センターと意見交換(東京へ弁護士1名を派遣)
10/3 原発関連の日弁連シンポ(広島へ弁護士多数派遣)
10/19 生業弁護団(中通り弁護団)事務局長 馬奈木厳太郎弁護士の講演会を開催
10/20 全国弁護団連絡会(東京へ弁護士1名を派遣)
10/21 日弁連全国情報交換会(東京へ弁護士1名を派遣)
10/21 原子力紛争解決センターと意見交換(東京へ弁護士1名を派遣)
11/25 訴訟に関する他の弁護団との意見交換(東京へ弁護士1名を派遣)
7 今後の展望
岡山への避難者数は、現在1013人、西日本(関西・中国・四国・九州地方)で最多となっています(11/27復興庁発表)
また、大都市圏以外ではとても珍しい現象ですが、震災以降の2年間、岡山県では流入人口が流出人口を上回り、転入超過となっています(総務省統計局発表)
背景には、災害の少ない地域として岡山が注目されていること、民間団体の受け入れ活動が活発であること、地方公共団体も受け入れに積極的であることなどの事情があります。
このような状況を受け、今後も、弁護団として出来る限りの支援を行いたいと考えております。
(ごあいさつ)
弁護団の結成から1年余り、たくさんの方々に支えられながら、弁護団の窓口として活動してまいりました。このたび、12月1日をもって安田弁護士に役目を引き継ぎました。
都会のビルの上からは何も見えない、との想いで東京を飛び出し、岡山に来たのがちょうど4年前です。当初の想いは全く変わりませんが、子供のいないうちに勉強したいという気持ちもあり、いったん拠点を東京に戻します。
私たちの使命は、さまざまな地域に避難されている方々に寄り添い、その声を集め、その想いを政府や裁判所にぶつけることです。今後は弁護団のいち団員として、今まで以上に力を尽くすつもりです。
これまで弁護団活動を支えてくださった方々には、深く感謝の意を表します。本当にありがとうございました。今後も、原発事故の真の収束を目指して、共に闘いたいと思います。よろしくお願いします。
弁護士 柿 崎 弘 行
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